第31回 「地域における医療・介護総合確保の推進」について

第31回 「地域における医療・介護総合確保の推進」について

今回のほっと・ケアライフ通信では、「地域における医療介護総合確保の推進」についてになります。

(1) 目的
医療と介護の両方を必要とする状態の高齢者が、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるようにすること。

(2) 方法
地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供。

(3) (2)を実現させるための具体的な事業
『地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供』を実現させるために、以下の8つの事業を実施することを介護保険法の中で制度化しました。

  1. ① 地域の医療・介護の資源の把握
  2. ② 在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討
  3. ③ 切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進
  4. ④ 医療・介護関係者の情報共有の支援
  5. ⑤ 在宅医療・介護連携に関する相談支援
  6. ⑥ 医療・介護関係者の研修
  7. ⑦ 地域住民への普及活動
  8. ⑧ 在宅医療・介護連携に関する関係市町村の連携

以上の8つは、『地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供』を実現させるために、『誰が』『何を』『どうやって』の3つに分類されます。
具体的には、『誰が』①で把握したもの、『何を』②から抽出された課題、『どうやって』③④⑤⑥⑦⑧を利用して、と分類されています。

(4) (3) ①~⑧ の事業の実施状況
各市町村の(3) ①~⑧ の実施状況の実施状況は以下のようになっています。
(※社会保障審議会介護保険部会 平成28年11月16日参考資料より)

  1. ① 地域の医療・介護の資源の把握  62.6%の市町村が実施
  2. ② 在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討  62.1%の市町村が実施
  3. ③ 切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進  38.1%の市町村が実施
  4. ④ 医療・介護関係者の情報共有の支援  47.9%の市町村が実施
  5. ⑤ 在宅医療・介護連携に関する相談支援  39.8%の市町村が実施
  6. ⑥ 医療・介護関係者の研修  60.9%の市町村が実施
  7. ⑦ 地域住民への普及活動  50.4%の市町村が実施
  8. ⑧ 在宅医療・介護連携に関する関係市町村の連携  57.6%の市町村が実施

各市町村の実施率が低いのが、③と⑤になります。実際に医療と介護が連携して行動することのハードルの高さがわかります。

(5) (3) ①~⑧ の事業を実施しない各市町村の理由
各市町村が(3) ①~⑧ の事業を実施しない理由は以下の通りになります。
(※社会保障審議会介護保険部会 平成28年11月16日参考資料より)

① 地域の医療・介護の資源の把握

  • 介護資源は把握できているが、在宅医療への対応状況等の医療資源の把握が難しい。
  • 市町村外の医療機関への受診が多く、広域的な医療資源の把握が必要だが、近隣市町村と調整できていないため。
  • 医療・介護の資源が数えるほどしかないため、改めて実施しなくても把握できている。

② 在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討 

  • 現状と課題について整理、分析するノウハウが乏しい。
  • 在宅医療・介護連携を主とした会議を設置していない。既存の会議(例:地域ケア会議)の活用を検討しているが、位置付けの整理が難しい。
  • 市町村外の医療機関等を利用する住民が多く、医師会や近隣市町村と実施したいが足並みが揃わない。
  • 市町村内に郡市区医師会の事務局がなく、郡市区医師会とのつながりも乏しいため、連携しにくい。
  • 医師会や在宅療養に関わる医師への働きかけ方がわからず、連絡・調整がとれていない。(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討

③ 切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進 

  • 体制整備に医師会の協力は不可欠と考えるが、具体的にどのように取り組めばいいかわからない。
  • 資源が少ないことや、近隣市町村の医療機関等の利用も多く、町内だけで切れ目のない体制を作るのは困難。近隣市町の医療・介護機関の協力が不可欠であるが、近隣市町村との調整までは至っていない。
  • (ア)(イ)に着手し,これらの取組を踏まえた形で取り組むべき項目と考えているため。

④ 医療・介護関係者の情報共有の支援

  • 医療・介護の資源が数える程しかないため、改めて情報共有ツールを作成しなくても個別に対応できる。
  • 患者の流出入があるため二次医療圏等広域的な運用をすると効果的と考えているが、近隣市町村との調整をどのようにしていったらいいかわからない、また、調整が難航している。
  • 医師会の管内市町村が複数市町村あり、各市町村の方針が定まらない。

⑤ 在宅医療・介護連携に関する相談支援

  • 相談・調整業務を担う有資格者(人材)の継続確保が課題となり実施できていない。
  • 医師会等の協力が必要と考えるが、地元医師会や医療機関の理解が得られていない。
  • 自治体規模が小さいため、複数自治体で実施を検討しているが、郡市区医師会との調整を含め検討が難航している。

⑥ 医療・介護関係者の研修

  • 人的な余裕やノウハウがなく、どのように実施したらいいかわからない。
  • (ア)による実態把握と(イ)による関係者との課題の整理ができておらず、研修の実施に至っていない

⑦ 地域住民への普及活動

  • 住民へ普及啓発できる程、連携や在宅医療に関する事項が十分に取り組めていない、サービスが整っていない。
  • 自治体として在宅医療等を推進する方向性がさだまっていない。関係団体と十分、協議されていない。

⑧ 在宅医療・介護連携に関する関係市町村の連携

  • 他市町村が広域連携についてどのような点を課題としているのか、広域連携を必要としているのかわからない。また、広域連携の進め方がわからない。
  • 県や保健所に医師会や基幹病院を交えた連携の推進を図っていただきたいが支援が得られていない。
  • 近隣市町村が二次医療圏も郡市区医師会の管内自治体とも異なるため連携のきっかけを掴めない。
  • 高次医療機関が市内にあり、市内の連携は必要だが、近隣市町村との連携の必要性はない。

以上の事業が実施できない理由をまとめると、隣接市町村との連携がとれていない・医師会との連携がとれていない・ノウハウがない、の3つが理由のほとんどを占めていることがわかります。そのため、近隣市町村や医師会などを含めた議会の設置が、地域における医療介護総合確保の推進のカギとなることが考えられます。

以上が第31回ほっと・ケアライフ通信「地域における医療介護総合確保の推進」についてになります。ご拝読有難うございました。