第22回 介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案についてのQ&A2015年8月発表分

第22回 「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&A 2015年8月分

 「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aが、平成27年8月に厚生労働省老健局振興課により発表されましたので、今回のほっと・ケアライフ通信では、このQ&Aについて考察していきます。

 介護予防・日常生活支援総業事業とは、サービス提供対象者である、要支援者と二次予防事業対象者(要支援・要介護になるリスクが高い高齢者)に,介護予防や配食・見守り等の生活支援サービスなど地域で高齢者を支える多様なサービスを,市町村の判断と創意工夫により総合的に提供できる事業です。

 平成27年8月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aは、(1)「サービスの類型」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実等」について、(3)「サービス利用の流れ」について、(4)「総合事業の制度的な枠組み」について、(5)「市町村の円滑な事業への移行・実施に向けた取り組み」について、(6)「その他の関連事項」について、の6つに分かれています。今回のほっと・ケアライフ通信では、(1) ~(3)について考察していきます。

(1)「サービスの類型」

Q1 現在、保健福祉事業で委託事業として配食サービスを行っている場合、新しい総合事業に移行後は、その他の生活支援サービスで行うべきか。

A1 保健福祉事業等で実施している配食サービスについては、引き続き市町村の独自事業として実施していただくことは、特段問題ないと考える。 一方、新しい総合事業の中のその他の生活支援サービスにおける配食サービスは、単なる配食だけではなく、「見守りを兼ねた配食」や「栄養改善を目的とする配食」を、具体的な内容として位置づけている。

A2 各市町村における配食サービスの対象者や具体的なサービス内容、実施主体等については、市町村の実情により、保健福祉事業、総合事業におけるサービス事業、地域支援事業における任意事業等どの事業に位置づけるか適切に判断されたい。

A3 なお、地域の配食サービスの今後のあり方等については、適宜、地域資源の把握や多様なサービス提供主体が参画する協議体を活用して検討することが有効である。

 新しい総合事業で行う配食サービスは、これまで保健福祉事業等で行っていた単なる配食サービスではなく、「見守りを兼ねた配食」や「栄養の改善を目的とする配食」など、具体的な内容をもっていないといけないとしています。保健福祉事業等で行っている配食サービスは引き続き提供可能としていますが、A3では適宜、保健福祉事業等による配食サービスの必要性の検討を求めています。

Q2 本市の配食サービス事業では、自立者・要支援者・要介護者まで多様な対象がいるが、その他の生活支援サービスで行う場合、要支援者以外は対象とならないのか。

A1 新しい総合事業におけるその他の生活支援サービスの対象者は、要支援認定を受けた者又は基本チェックリストによる介護予防・生活支援サービス事業対象者に限られる。

A2 なお、住民主体による見守りや栄養改善を目的とする配食サービスについて、間接経費(光熱水費、サービスの利用調整等を行う人件費等)等の補助を受けながら実施している場合は、要支援者や介護予防・生活支援サービス事業対象者以外にもサービスを提供することを妨げるものではない。

A3 また、新しい総合事業における配食サービスの対象とならない高齢者に対しては、任意事業の「地域資源を活用したネットワーク形成に資する事業」において実施することが可能である。

 A1では、新しい総合事業におけるその他の生活支援サービスの対象者は、要支援認定を受けた者又は基本チェックリストによる介護予防・生活支援サービス事業対象者に限られる、としていまが、A2で間接費等の補助を受けている場合は、例外としています。

 上記の表によりますと、訪問型サービスBによる配食サービスが例外として該当します。

(2)「生活支援・介護予防サービスの充実等」

Q3 新しい総合事業における通所型サービスB及び訪問型サービスBは、有償・無償のボランティア等により提供される住民主体による支援であるが、介護予防ケアマネジメントを経た上で利用するサービスである以上、ボランティアとはいえ一定程度のサービスの質が求められるのではないか。

A1 通所型サービスB及び訪問型サービスBは、介護保険法施行規則第140条の62の3第1項第2号の規定にあるように、市町村が補助その他の支援を通じて、地域の人材や社会資源の活用を図った上で実施するものであり、住民が自主的に実施するものである。

A2 既存の介護事業所による既存のサービスに加えて、これら住民主体の通所型サービスB及び訪問型サービスBを地域でつくることは、多様な主体による多様なサービスが提供されるとともに、支援する側と支援される側という画一的な関係性ではなく、地域とのつながりを維持しながら、有する能力に応じた柔軟な支援を受けていくことで、自立意欲の向上につながることが期待される。

A3 なお、サービスの提供主体となるボランティアに関しては、一定の知識を持っていることが望ましいことから、総合事業のガイドライン(P33、P35~36)でお示ししているカリキュラム例や先行自治体の例を参考に、地域の実情に応じた研修を実施していただくとともに、通所型サービスB及び訪問型サービスBの基準については、自主性を尊重しつつ設定することが望ましいため、介護保険法施行規則第140条の62の3第2項に規定する5項目※のみを共通基準とするが、地域の実情に応じて補助要綱などでさらに基準を設定することも可能である。

※介護保険法施行規則第140条の62の3第2項に規定する共通基準

・従業者の清潔の保持及び健康状態の管理

・従業者又は従業者であった者による秘密保持
・事故発生時の対応
・廃止又は休止の届出

・廃止又は休止の届出をしたときの便宜の提供

 ボランティアの方の育成はA3で、総合事業のガイドラインで示しているカリキュラム例や先行自治体の例を参考にするべきとしています。ガイドラインで示しているカリキュラム例は、①介護保険制度・介護概論 ②高齢者の特徴と対応 ③介護技術 ④ボランティア活動の意義 ⑤緊急対応 ⑥認知症の理解 ⑦コミュニケーションの手法・訪問マナー ⑧訪問実習オリエンテーションがあげられています。各市町村の事例を見ると、これらの内容を大体10時間~15時間の講習で完了としています。
 短い時間の講習になるので、ボランティアの方によってサービスの質が大きく異なることが懸念されます。

Q4 ボランティア等の支援の担い手に対する研修・人材育成の実施については、市町村が主体的に研修を行うことが示されているが、カリキュラム等について国から詳細な内容の提示があると解してよいか。また、当該事業については、地域医療介護総合確保基金(介護分野)を市町村が活用すると解してよいか。

A1 ボランティア等の支援の担い手に対する研修・人材育成については、総合事業のガイドライン(P33、P35~36)でお示ししているカリキュラム例や先行自治体の例を参考に、地域の実情に応じた研修を実施していただきたいと考えており、さらに詳細な内容をお示しすることは考えていない。

A2 また、一般的なボランティア等の支援の担い手の養成は、地域支援事業の生活支援体制整備事業を活用して実施することを想定しているが、専門性の高い場合や広域的な活動の場合には、地域医療介護総合確保基金(介護分野)の活用も可能である。

A3 なお、ボランティア等の支援の担い手の養成は、一般的には以下のような事業を活用して実施していただくことを考えている。

① 国では、各都道府県において生活支援コーディネーター養成の講師となる者を養成する中央研修を実施する。平成27年度は7月から9月にかけて順次全国4ブロック(東京、仙台、大阪、福岡)で実施する。
② 都道府県では、生活支援コーディネーター、一定程度専門的な生活支援サービス、広域的な活動に携わる輸送、配食等の担い手の養成を、平成27年度から創設された地域医療介護総合確保基金(介護分)を活用し実施する。
③ 市町村では、ボランティア等の担い手養成を、地域支援事業の生活支援体制整備事業を活用し実施する。

(3)「サービス利用の流れ」

Q5 総合事業における介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)は、地域包括支援センターが行うこととされ、介護予防支援のプランの多くが介護予防ケアマネジメントに移るとしているが、介護予防・生活支援サービス事業対象者や総合事業のみを利用する要支援者のケアプラン作成について介護予防支援事業所の担当職員が介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)を行うことはできるのか。

A1 総合事業における介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)は、地域包括支援センターが実施するものとしており、センターに配置されている三職種(保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員)のほか、地域包括支援センターから事業の一部委託を受けている居宅介護支援事業所の介護支援専門員により実施することができる。

A2 総合事業への移行後は、利用するサービスによって、介護予防支援と介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)に分かれることとなるため、ケアマネジメント実施者がその都度に変わることなどのないよう、この二つは一体的に行われるべきものと考えている。 このため、担当職員として介護予防支援業務を行っている職員については、「指定介護予防支援等の事業の人員及び運営並びに指定介護予防支援等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準について」(平成18年3月31日発出振興・老人保健課長連名通知)において、当該介護予防支援事業所である地域包括支援センターの職員等と兼務して差し支えないものとされていることから、介護予防支援事業所の担当職員は地域包括支援センターの職員と兼務したうえで、切れ目なく介護予防ケアマネジメント(第1号介護予防支援事業)を行っていただきたい。

 総合事業に移行すると、要支援認定者が受けるサービスである「介護予防支援」と、チェックリスト該当者及び要支援認定者が受けるサービスである「介護予防ケアマネジメント」の二つのサービスが発生します。介護予防支援は介護予防支援事業所がケアプランを立て、介護予防ケアマネジメントは地域包括支援センターがケアプランを立てます。要支援者は両方のサービスを受けることが出来るのでケアプランの作成者は、介護予防支援事業所と地域包括支援センターを兼務して一人で一体的なケアプランを作成しなければならないとしています

Q6 住所地特例対象者の介護予防ケアマネジメントに係る財政調整については、介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン(老発0605第5号)において負担金は、「介護予防支援費の単位数を上限に算定」と記載されているところであるが、介護予防支援費430単位以下で算定することも可能であるのか。また、この財政調整はケアマネジメントAだけでなくBやCも対象になるのか。

A1 介護保険法施行規則第140条の72の3第3項により、財政調整を行う際の額は、利用実績に、介護保険法第58条第2項に規定する厚生労働大臣が定める基準により算定した額として介護予防支援費を乗じて得た額とされている。 国保連の財政調整に係る事務手続きの面からも、全市町村とも統一の単価であることが必要であり、介護予防ケアマネジメントの類型やその単価設定に関わらず、1件にあたり430単位(4,300円)として財政調整を行う。

 以上が平成27年8月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aは、(1)「サービスの類型」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実等」について、(3)「サービス利用の流れ」についてになります。(4)「総合事業の制度的な枠組み」について、(5)「市町村の円滑な事業への移行・実施に向けた取り組み」について、(6)「その他の関連事項」については、次回以降のほっと・ケアライフ通信でご紹介させて頂ければと思います。失礼いたします。