第12回 総合事業Q&A2015.2発表分前編
今回のほっと・ケアライフ通信は、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aの続編が、厚生労働省老健局振興課により発表されましたので、このQ&Aについて考察していきます。
平成27年2月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aは、(1)「サービスの類型」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」について、(3)「自立支援に向けた関係者間での意識の共有」について、(4)「総合事業の制度的な枠組み」について、(5)「円滑な事業への移行・実施」について、の5つに分かれています。
今回のほっと・ケアライフ通信では、(1)「サービスの類型」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」について、(3)「自立支援に向けた関係者間での意識の共有」、(5)「円滑な事業への移行・実施」について考察していきます。
(1)「サービスの類型」については、次の質問についての回答が発表されました。
A1 総合事業においては、総合事業の枠内の事業だけでなく、市場における民間サービス等を活用することを通じて、要支援者等に対し、効果的かつ効率的な支援を提供することが重要である。具体的な民間サービスについては、スーパーマーケット等による食材配達、家政婦紹介所等を通じた家事援助サービス、コンビニエンスストア等による配食、新聞販売所等による見守りなどさまざまなものがあると想定される。
なお、市町村や地域包括支援センターによる民間サービスの活用推進の観点からは、まず、そのサービス内容等を把握することが必要であるところ、このためには、これまでガイドライン(案)やQ&Aで示してきた組織や団体(※)とともに、スーパーマーケット、家政婦紹介所、コンビニエンスストア、新聞販売所などの多様な民間企業、団体にも協議体に参画いただき、情報交換や連携を行うことが有効であると考えられる。市町村としてはこのような観点も踏まえて、例えば、まず最低限必要なメンバーで協議体を立ち上げ、徐々にメンバーを増やしていくなどといった方法も活用し、協議体の早期設置を進めていただきたい。
※ 市町村、地域包括支援センター等の行政機関、生活支援コーディネーターのほか、NPO、社会福祉法人、社会福祉協議会
(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」については、次の質問についての回答が発表されました。
A1 総合事業においては有償ボランティアの方々の活躍も期待されるが、ボランティア活動は、一般的には「自発的な意志に基づき他人や社会に貢献する行為」とされ、その性格として「自主性」、「社会性」等があげられる。
その中で、有償ボランティアは、ボランティアによる支援に対し、交通費などの実費や謝金の支払いを受けるものである。
A2 その中で、有償ボランティアと称していても、個別の事案ごとに活動実態を総合的に判断し、使用従属関係下にあると認められる場合には、労働基準法第9条の労働者であるとして、労働基準関係法令や最低賃金法の適用対象となる。
A3 労働基準法第9条の労働者に該当するか否かに当たっては、以下の点等について総合的に勘案して判断することになる。
①ある活動日、活動時間に、活動を行うことについて、指示があるか(注1)
(注1)活動を行うことについて、ボランティアに諾否の自由があるか
② 活動時間の延長や、活動日以外の日における活動指示が行われているか
③ 活動の割当、活動時間の指定、活動の遂行に関する指揮命令違反に対する手当等の減額等の制裁があるか
④ 欠席・遅刻・早退に対する手当の減額制裁があるか(実活動時間に応じた手当を支給する場合においては、活動しなかった時間分以上の減額を行っている場合があるか)
⑤ ボランティアが、一般の労働者と明確に区分されているか(注2)
(注2)「明確に区分されている」とは、例えば、活動場所については、一般の労働者と全く異なる部屋で活動しなければならないということではなく、一般の労働者と同じ部屋の中で活動する場合であっても、対象者がボランティアであることが分かるよう区別されていることが考えられる。(ボランティアと表記された名札を付ける等)
有償ボランティアとは、活動に伴う経費(交通費、材料費等)などを実費弁償という形で金銭を受け取るボランティアになります。労働基準法9条の労働者と有償ボランティアをわけることが必要な理由は、次の4つが大きくあるかと思います。
①労働委基準法が適用されるかどうか。有償ボランティアでも労働基準法第9条の労働者に該当するとされた場合は、労働基準法が適用され、有給休暇や就業規則の作成などが命じられます。
②最低賃金法が適用されるかどうか。有償ボランティアでも労働基準法第9条の労働者に該当するとされた場合は、最低賃金法が適用され、その地域の最低賃金以上の賃金を払わなければいけなくなり、そもそもボランティアを利用する意味がなくなります。
③労働保険かボランティア保険か。労働者やボランティアの人に業務中にけがなどがあった場合に支払われる保険です。労働者かボランティアか明確に分けとかないと、ボランティアなのに労働者と判定され、ボランティア保険の適用がなく無保険状態になることになります。
④労働者とボランティアの要件の違い。実際は労働者として働いているのに有償ボランティアとして取り扱われ、不利な条件で労働させられる危険性があります。
(5)「円滑な事業への移行・実施」については、次の質問についての回答が発表されました。
A1 従前の介護予防手帳は、本人、家族、地域包括支援センター、事業者等の関係者が介護予防事業に関する情報を共有することで介護予防事業を効果的に実施することを目的に、生活機能の状況や介護予防ケアプランの内容等をファイリングし、本人に携行させる媒体として活用されてきたところ。また、介護予防手帳は、介護予防普及啓発事業における「介護予防に資する基本的な知識を普及啓発するためのパンフレット等の作成及び配布」、「介護予防に関する知識又は情報、各対象者の介護予防事業の実施の記録等を管理するための媒体の配布」に位置づけられるが、その範囲において市町村の創意工夫により様々な情報が綴られ、配布されてきたものと把握している。
A2 総合事業においては、これらに加えて、特に「初回のみの介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントC)」の対象者に対してはケアプランに代わる具体的な様式が必要と考えられることから、セルフマネジメント推進のためのツールの1つとして活用することも念頭に、平成26年度老人保健健康増進等事業にて考え方を整理し、様式例(中間案)をお示ししたものである。
A3 したがって、お示しした様式例はあくまでも例であり、規格や手帳の構成について市町村によって自由に変更していただくことは差し支えない。
A4 なお、健康増進法に基づく「健康手帳」と合冊する場合には、お見込みのとおり、頁数等で適切に按分し、区分して経理することが必要と考える。
介護予防手帳についての質問になります。内容としては①介護予防手帳の形式や内容について、②介護予防手帳の作成基準、③作成に要した経費の負担基準についてになります。①については各市町村の判断、③についてはページ数による按分が回答として出されました。②については、今回は言及されていませんでした。
(5)「円滑な事業への移行・実施」については、次の質問についての回答が発表されました。
A1 ガイドライン案・1「(2)総合事業の多様な移行の推進」において多様な移行の実施例をあげているが、既に給付によるサービスを利用している者に関し、ある時点をもってすべての者を予防給付から総合事業に移行することは可能であるが、ガイドライン(案)P69「(3)介護予防ケアマネジメントにおける留意事項」にてお示ししているとおり、利用者への丁寧な説明とその理解・同意を得て、サービスを提供することが重要である。
なお、総合事業への移行により、新たに介護予防ケアマネジメントや地域支援事業によるサービスの提供を受けることとなるので、事業所と被保険者との間に介護予防ケアマネジメント、地域支援事業によるサービスの提供に係る契約等が必要となることに留意されたい。
※給付によるサービス利用から事業によるサービス利用への切り替えに係る介護予防ケアマネジメントの依頼の届出の取扱については、平成27年1月9日版Q&A第4問6を参考されたい。
ガイドライン(案)では、「介護予防ケアマネジメントの実施に当たっては、自立支援や介護予防のため、総合事業の趣旨やケアマネジメントの結果適当と判断したサービスの内容について、利用者が十分に理解し、納得する必要がある。そのため、地域包括支援センターは、利用者本人やその家族の意向を的確に把握しつつ、専門的な視点からサービスを検討し、そのサービス内容、自立支援や介護予防に向けて必要なサービスをケアプランに位置付けていること、それによりどのような効果を期待しているのか等を利用者に丁寧に説明し、その理解・同意を得て、サービスを提供することが重要である。」としています。
しかし、厚生労働省の発表では平成24年時点で要支援者が1,498,388人、2次予防事業対象者が2,962,006人います。そのため合計4,460,394人が介護予防ケアマネジメントによるケアプランの対象者になります。それに対して、地域包括支援センターの数は厚生労働省の発表では平成24年時点で4,328か所、支所、サブセンターを含めて7,072か所になります。つまり、支所、サブセンターを含めて1か所あたり630人以上のサービス対象者を管理することになります。
ケアマネージャー1人当たりの管理限度人数が40人とされているため、1つの事業所に約16人の管理者が必要になる計算になります。そのため、介護予防・日常生活支援総合業事業の期限である平成29年度までに、地域包括支援センターの整備が急がれます。
A1 日常生活圏域の他、広域連合の市町村ごと、あるいは政令市の行政区ごとなど、一定規模のエリアを想定しているが、市町村の判断により適切に設定されたい。
A1 総合事業の段階的な実施例として、「初年度は総合事業によるサービスを希望する者以外は予防給付を継続」する例を挙げているが、これは予防給付の受け皿の整備等のために要する期間を移行後1年間と想定し、お示ししているものである。その中で、ご質問のような方法で総合事業に移行した場合、結果的にお尋ねのような事例が発生することはあり得るものと考えている。なお、いずれにしても、平成29年4月からは市内全域で総合事業を実施することが必要であり、平成29年4月以降は新規の利用者については総合事業を利用し、既に予防給付を受けている利用者については要支援認定の有効期間が切れたタイミングからケアマネジメントを通じて予防給付から総合事業に移行することとなる。
各市町村は介護予防給付を介護予防・日常生活支援総業事業に、少なくても平成29年4月には移行しなければならないとされています。そして、希望する要支援者は移行後も、有効期限終了までは、総合事業によるサービスか介護予防給付によるサービスを受けるかを選択することが出来ます。要支援認定の有効期限は最長1年間であるため、平成29年3月31日に要支援認定を1年間受けた場合は、平成30年3月30日まで介護予防給付を受けることができます。
A1 総合事業において給付制限に相当する事業を行う際には、事業所において給付制限対象者であることを判別することができるよう、何らかの形で給付制限に相当する事業の対象者である旨を表示する必要があるものと考えており、貴見のように、被保険者証にその旨を記載することにより対応することも一つの案であると考えている。
介護保険料の滞納が続くと、保険給付に制限が設けられる場合があります。
A1 貴見のとおりであり、総合事業においては各市町村における給付制限に相当する事業の内容に応じて、適切に記載の変更及び教示等を行っていただきたい。
以上が平成27年2月に発表された、「(1)「サービスの類型」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」について、(3)「自立支援に向けた関係者間での意識の共有」、(5)「円滑な事業への移行・実施」についてのQ&Aでした。
次回は、(4)「総合事業の制度的な枠組み」についてのQ&Aについて考察させていただきます。