第11回 総合事業Q&A2015.1発表分(4)

第11回 総合事業Q&A2015.1発表分(4)

 前回に引き続き今回のほっと・ケアライフ通信も、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aが、厚生労働省老健局振興課により発表されましたので、このQ&Aについて考察していきます。

 平成27年1月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aは、(1)「総合事業に関する総則的な事項」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」について、(3)「サービス利用の流れ」について、(4)「総合事業の制度的な枠組み」について、の4つに分かれています。今回のほっと・ケアライフ通信では、(3)「サービス利用の流れ(後編)」及び(4)「総合事業の制度的な枠組み」について考察していきます。

 「総合事業に関する総則的な事項」については、次の質問についての回答が発表されました。

Q8 総合事業の介護予防ケアマネジメントの実施にあたっては、予防給付の指定介護予防支援と同様に利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならないのか。

A1 介護予防ケアマネジメントの実施については、指定介護予防支援と同様に、基本的なケアマネジメントのプロセスに基づくものと考えており、特にアセスメントにあたっては、利用者が置かれている環境や、日常生活及び社会参加の状況等を正確に把握する必要があることから、利用者が入院中などの場合を除き、必ず利用者の居宅を訪問し、利用者及び家族と面接して行う必要がある。

A2 また、モニタリングにあたっても、利用者本人がセルフマネジメントによって実施する場合(ケアマネジメントC)を除き、原則としては指定介護予防支援と同様、少なくとも3ヶ月に1回及びサービスの評価期間が終了する月、利用者の状況に著しい変化のあったときは利用者の居宅で面接を行う必要があるが、市町村の判断により訪問する間隔を空けるなど簡略化することも想定している(ケアマネジメントB)。

A3 いずれにしても、利用者の居宅を訪問し、日常生活の場面を把握することで、利用者の生活状況をより具体的に捉えることができ、環境面へのアプローチや道具等の改善等による本人の負担軽減等、更に幅広く支援を検討出来るものであることから、利用者の居宅の訪問による面接については、適切なタイミングを捉えて実施していただきたい。

 この質問を考察していく前に、ケアマネジメントA、ケアマネジメントB、ケアマネジメントCについてご説明させていただきます。

 ① ケアマネジメントA(原則的な介護予防ケアマネジメント)
 現行の予防給付に対する介護ケアマネジメントと同様、アセスメント(利用者が何を求めているのか正しく知ること、そしてそれが生活全般の中のどんな状況から生じているかを確認すること)によってケアプラン原案を作成し、サービス担当者会議を経て決定する。モニタリング(利用者の方の現状を把握して認識すること)については、おおむね3ヵ月ごとに行います。

 ② ケアマネジメントB(簡略化した介護予防ケアマネジメント)
 アセスメントからケアプラン原案作成までは、ケアマネジメントAと同様であるが、サービス担当者会議を省略したケアプランの作成と、必要に応じてモニタリングの時期を設定し、評価及びケアプランの変更等を行う簡略化した介護予防マネジメントを実施します。

 ③ ケアマネジメントC(初回のみの介護予防ケアマネジメント)
 ケアマネジメントの結果、利用者本人が自身の状況、目標の達成等を確認し、住民主体のサービス等を利用する場合に実施します。初回のみ、簡略化した介護予防のケアマネジメントのプロセスを実施し、ケアマネジメントの結果を利用者の方に説明します。モニタリング等は行われません。ケアマネジメントの結果は利用者本人の同意を得て、サービス提供責任者に提出されます。

 Q8の「総合事業のケアマネジメントとの実施にあたって、利用者宅に訪問して、使用者その家族に面接して行わなければならないか」という質問に対して、今回、3つの回答が提示されました。
 ① ケアマネジメントの実施にあたっては必ず、利用者の方の居宅を訪問し、利用者の方及び家族と面接して行う必要があること

 ② モニタリングについては、ケアマネジメントCを除き、原則としては指定介護予防支援と同様、少なくとも3ヶ月に1回及びサービスの評価期間が終了する月、利用者の状況に著しい変化のあったときは、利用者の居宅で面接を行わなければならない。しかし、ケアマネジメントBについては市町村の判断での簡略化も想定していること

 ③ ①と②である程度の決まりはあるが、直接利用者に会って話すことは大事なので、適切に面接やモニタリングをおこなうこと。

以上の3つになります。
 モニタリングについては、従来の予防給付にあたるケアマネジメントAの利用者だけではなく、ケアマネジメントAを簡略化したケアマネジメントBについても3ヵ月に1回は利用者宅で面接を行わなければならないという回答がでました。このことから、地域包括支援センターの負担は大きくなることが予想されます。そのため、ケアマネジメントBの場合は、市町村の判断で簡略化という救済措置が予定されていると考えられます。

Q9 「初回のみの介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントC)」においては、「初回のみ、簡略化した介護予防ケアマネジメントのプロセスを実施し、ケアマネジメントの結果を利用者に説明」となっているが、ここでいう「簡略化した介護予防ケアマネジメント」は、ケアマネジメントBと同様に、ケアプラン原案を作成するということか。それとも、ケアマネジメント結果の通知で代用してよいか。

A1「初回のみの介護予防ケアマネジメント」においては、その対象について、要支援者または基本チェックリスト該当者のうち、地域の通いの場等へ自ら参加し、介護予防に取り組むことができる高齢者を想定している。

A2 介護予防・日常生活支援事業ガイドライン案P72では「初回のみのケアマネジメントを行う場合は、サービス事業の利用の前に利用者及びサービス提供者等とケアマネジメント結果等を共有することにより、ケアプランの作成に代えることもできる」としており、ケアマネジメント結果としては「本人の生活の目標」「維持・改善すべき課題」「その課題の解決への具体的対策」「目標を達成するための取り組み」等本人の取り組みの継続に必要な内容が記載されるべきと考える。

A3 なお、「初回のみのケアマネジメント」を行った際のケアマネジメント結果の様式としては、例えば、介護予防サービス・支援計画書を活用し、①アセスメント領域と現在の状況(現行の4つの領域に限らず課題分析標準項目を参考に実施)、②本人・家族の意欲・意向、③目標、④本人のセルフケアや家族の支援、インフォーマルサービス((民間サービス)を追加)、⑤介護保険サービス又は地域支援事業((総合事業のサービス)を追加)、⑥事業所((利用先)を追加)といった項目についてのみ記載して使用する他、市町村において任意の様式を使用することも想定している。

A4 更に、利用者の継続した取り組みを支援するツールとして、「介護予防手帳」も積極的に活用していただきたい。

 Q9ではケアマネジメントCについて、ケアマネジメントを実施する場合についての質問になります。この質問に対しては、ガイドライン案通り、ケアプランの原案は基本チェックリストによるケアマネジメント結果の通知で代用することができる、としています。

 ケアプランの原案と基本チェックリストによるケアマネジメント結果の通知の違いについて、ご説明させていただきます。

ケアプランの原案 ケアマネジメント結果の通知
作成者 ケアマネージャー 市町村
種類 居宅サービス計画・施設サービス計画 基本チェックリスト
内容 ○居宅サービス計画
在宅で介護受ける人の在宅サービスの種類や内容、スケジュール、提供するサービス業者などのプラン化
○施設サービス計画
サービス内容等のプラン化
アセスメント(課題分析)領域と現在の状況、本人・家族の意欲・意向、目標、本人のセルフケアや家族の支援、インフォーマルサービス、介護保険サービスまたは地域支援事業、事業所

 ケアプランの原案と基本チェックリストによるケアマネジメント結果の通知で大きく異なる点はサービス内容の決定、スケジュール、提供するサービスのプラン化の3点となっています。ケアプランの作成において上述の3点は、時間と手間がかかるところになります。

 A4にある介護予防手帳とは、高齢者ご本人の「暮らし」を文字情報として記録することにより、介護予防の観点からの「気づき」を促し、認知症の早期発見・早期受診につなげるとともに、ご本人の意向を踏まえた上で、ケア関係者が認識を共有するための資料としても活用でき、支援の具体策につなげるガイドブックの指針となるものです。

Q10 原則的な介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントA)については、現行の予防給付に対する指定介護予防支援と同様の手続きを行うものと考えるが、モニタリングについては、総合事業の介護予防ケアマネジメントにおいては概ね3か月ごとに行うだけでよいのか。

A1 原則的な介護予防ケアマネジメント(ケアマネジメントA)については、モニタリングについても、指定介護予防支援と同様に、少なくとも3ヶ月に1回及びサービスの評価期間が終了する月、利用者の状況に著しい変化のあったときは、利用者の居宅を訪問して利用者に面接し、それ以外の月においては、可能な限り、利用者の通所先を訪問する等の方法により利用者に面接するよう努めるとともに、面接ができない場合は、電話等による利用者との連絡を実施していただきたい。

 上記Q8の質問とほぼ同じ内容だが、後半部分の「面接しなければならないと決められた日以外にも可能な限り、面接するよう努めるとともに、面接ができない場合は、電話等による利用者との連絡を実施していただきたい。」という部分が新しく追加されました。

Q11 要介護認定等申請において非該当(自立)と判定された後に、基本チェックリストの結果によりサービス事業対象者に該当した場合は、サービス事業を利用することは可能か。

A1 総合事業における介護予防・生活支援サービス事業の対象者は、従来の要支援者に相当する者であり、要支援認定を受けた者のほかに、基本チェックリストにより事業対象者に該当した者(介護予防・生活支援サービス事業対象者)のいずれかとしている。

A2 ガイドライン案P72では「非該当となった場合は、基本チェックリストを実施し、サービス事業の対象者とすることができる」としており、要支援認定申請の結果が非該当であったとしても、基本チェックリストの結果が「事業対象者に該当する基準」の一つでも該当した場合は、介護予防ケアマネジメントによって、地域で役割を持てる生活を目指して、「心身機能」だけでなく、「活動」や「参加」にもバランス良く働きかける介護予防に資するサービス等の利用につなぐことができると考えている。一方、基本チェックリストの結果、どの基準にも該当しなかった場合は、介護予防ケアマネジメントは受けずに、一般介護予防事業の利用を案内することとなる。

 要介護認定調査で自立と判定されたものが、再度基本チェックリストを受けて今の要支援者が受けるサービスに該当する、総合事業における介護予防・生活支援サービス事業を受けることが出来るのか、といった内容になるかと思います。

 この質問に対する今回の回答は、基本チェックリストの結果が総合事業における介護予防・生活支援サービスを受ける基準に一つでも該当すれば、サービスを受けることが可能となっております。

 このことから、現行の制度では同じ基準の下に「要介護者」と「自立」の間に「要支援者」があるが、総合事業での制度では「要介護者」と現行の制度でいう「要支援者」は別なものとしていることが考えられます。

Q12 既に要支援認定を受けている者が、その有効期間満了後に総合事業のサービスに移行する際は、基本チェックリストの記入が必要か。必要な場合、基本チェックリストの記入を認定有効期間満了前に実施し、その結果をもって、サービス事業対象者に該当するかどうか判断し、介護予防ケアマネジメントを実施してよいか。

A1 要支援認定を受けていた者について、その認定有効期間満了後に総合事業のサービスを利用する場合は、要支援認定を更新するか、基本チェックリストの記入結果によりサービス事業対象者と確認する必要がある。

A2 その際の基本チェックリストの記入については、要支援認定の有効期間が満了した後も切れ目なくサービスを利用することができるよう、有効期間満了前に実施し、介護予防ケアマネジメントに円滑につながるよう配慮することが適切である。

A3 そこで、例えば、地域包括支援センターの職員(指定介護予防支援業務の一部を受託する指定居宅介護支援事業者の介護支援専門員を含む)が被保険者宅を訪問した際に、介護予防・生活支援サービス事業の利用についても説明し、本人の意向を確認したうえで、サービス事業の利用を希望する場合には、基本チェックリストをその場で記入してもらうなど、介護予防ケアマネジメントに円滑につながるように配慮していただきたい。

 Q12では、要支援認定を受けていた人が、要支援の認定有効期間満了後に総合事業のサービスを受けることための方法について回答されています。

 支援の認定有効期間満了後に総合事業のサービスを受けるためには、要支援認定を更新するか、基本チェックリストの記入結果によりサービス事業対象者と確認する必要がある、としており、円滑なサービス移行のために基本チェックリストは有効期間満了前に行うことを進めています。

Q13 総合事業に移行した市町村において、移行前に予防給付を受けていた者が、要支援の認定有効期間が満了した翌月から、基本チェックリストによるサービス事業対象者として総合事業のサービスを利用した場合、総合事業開始月に初回加算を算定してよいか。

A1 初回加算の算定については、基本的には、指定居宅介護支援、指定介護予防支援における基準に準じることとしており、①新規に介護予防ケアマネジメントを実施する場合(介護予防ケアマネジメントの実施が終了して二月以上経過した後に、介護予防ケアマネジメントを実施する場合)、②要介護者が、要支援認定を受け、あるいはサービス事業対象者として介護予防ケアマネジメントを実施する場合に算定できると考えている。

A2 お尋ねの場合においては、要支援者からサービス事業対象者に移行しており、いずれにしても従来の要支援者に相当する者であって、上記の条件には該当しないため、初回加算の算定を行うことはできない。

A3 なお、ガイドライン案P107のとおり、初回加算等国の定める加算を市町村が加算と認める場合は、その範囲で上限額を超過することができることとする予定である。

 A3の「初回加算等国の定める加算を市町村が加算と認める場合は、その範囲で上限額を超過することができることとする予定である。」とあり、ガイドライン案P107には加算について次のようなことが述べられています。

 ①市町村は、その実情に応じて加算を定めることが出来るが、加算を定めた結果、国が定める金額(予防給付と同じ額)を超えることは出来ない。
 ②国が定める加算を加えた結果、国が定める金額(予防給付と同じ金額)を超えた場合は、その加算の範囲内において国が定める金額を超過することができる。

 「総合事業の制度的な枠組み」については、次の質問についての回答が発表されました。

Q1 現在、住所地特例適用居宅要支援被保険者に係る介護予防支援については、保険者市町村の地域包括支援センターが実施主体であるため、住所地特例施設所在市町村に所在する居宅介護支援事業所等へ委託するなどして対応している。今般の介護保険法改正によりこれらの取扱はどのように変わるか。

A1 今般の介護保険法改正により、住所地特例適用居宅要支援被保険者に係る介護予防支援や介護予防ケアマネジメントの実施主体は、施設所在市町村の地域包括支援センターとされたところ。(介護保険法第58条第1項、第115条の45第1項柱書き)
 これにより、総合事業のみを利用する場合、介護予防給付のみを利用する場合、総合事業と介護予防給付を併用する場合のいずれであっても、施設所在市町村の地域包括支援センターが介護予防ケアマネジメント又は介護予防支援を実施することになるため、平成27年4月までに保険者市町村と施設所在市町村との間でこれら変更に伴う引き継ぎ等を済ませておく必要がある。この引き継ぎ等は、利用者に趣旨の説明をした上で、転出入等による異動で保険者変更を伴う場合の対応と同様に行うことが求められるものであって、この際、利用者との契約についても、施設所在市町村の地域包括支援センターとの契約が必要であることに留意されたい。
 なお、予防給付による介護予防支援費については、施設所在市町村の地域包括支援センターの請求により、国保連経由で保険者市町村が給付として審査・支払いを行うことになる一方、総合事業による介護予防ケアマネジメント費については、施設所在市町村が負担金調整依頼書を年1回国保連に提出して、国保連が負担金として財政調整を行う予定である。
 ※ 住所地特例適用居宅要支援被保険者の総合事業に係る介護予防ケアマネジメントに関しては、年一回の国保連を通じた調整のため、施設所在市町村において円滑に調整できるように資料等を保存しておくことが必要。(様式については今後示す予定)

 上記の質問は、介護予防・日常生活支援総業事業の「現行の介護予防支援」に該当するサービスについて住所地特例は提供されるのかという内容になります。

 この質問に対し今回のQ&Aでは、介護予防・日常生活支援総業事業のサービスに住所地特例の適用はなく、実際にサービスを受ける市町村が費用を負担する、との回答をしました。これは、受けられるサービスの内容やサービスの費用負担が、各市町村によって異なるためだと考えられます。

 しかし、住所地特例が利用できなくなると、住所地特例施施設が多くある市町村の介護予防・日常生活支援総業事業の費用負担が大きくなるため、総合事業によるケアマネジメント費については、国保連の負担金とするとされています。

 以上が平成27年1月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aのうち、(3)「サービス利用の流れ(後編)」(4)「総合事業の制度的な枠組み」についてのQ&Aでした。